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EAPとは
EAPとは
EMPLOYEE ASSISTANCE PROGRAM:EAP
1.EAPとは
1.EAPとは

2.EAPの歴史
2.EAPの歴史
EAPは、もともと1960 年代にアメリカで始まった従業員に対するサポート・プログラムです。
アメリカでは、アルコール依存やギャンブル、薬物依存や経済的困難などの問題を抱えている労働者が多く、メンタルヘルス疾患が社会問題となっています。
メンタルヘルスを悪化させると、当然その労働者の生産性が低下しますし、休職が必要になるケースもあります。
さらには横領や窃盗などの犯罪行為を行い、企業に損害を与える例もみられます。
そうなると、単なる一従業員のメンタル疾患問題では済まず、雇用者である企業側にも多大な損失が発生します。経済的な損失のみならず、社会による信用も失われてしまうでしょう。
そこで、こういった労働者の抱える問題解決を雇用企業が支援し、労働者の精神安定を向上させて、雇用する企業も利益を得ようという目的で導入されたのが、EAPです。
当初のEAP は、従業員のアルコール依存症などの精神疾患への対処が中心となっていましたが、次第に広がりを見せ始め、今では健康な従業員のストレス軽減や夫婦・家庭問題、対人関係などの悩み、キャリア問題やライフスタイルについての相談などを、幅広く扱っています。実際にEAPを利用している人も、健康な人の割合が高いです。
また、1人1人の従業員へのサービスだけでなく、ストレスへの対処やモチベーションアップのための研修なども実施されます。
実際にEAPは企業の業績向上に効果を発揮しており、米国ではフォーチュントップ500の90%の企業がEAPを導入しているといわれています。
3.日本の現状とEAP
3.日本の現状とEAP
日本では、「EAP」にまだあまりなじみのない経営者も多いでしょう。
EAPは日本において、どのような位置づけになるのでしょうか?
うつ病などの精神疾患を理由とする労災の申請件数も認定件数も年々増加していますし、精神疾患を理由として過労自殺する労働者も増加傾向にあります。
3-1.日本では労働者のストレスが社会問題になっている
EAPは、もともと従業員の抱えるメンタルヘルス問題のケアを主な目的にして発展してきたものです。そして今、日本でも労働者のメンタルヘルスの問題が非常に大きくなってきています。うつ病などの精神疾患を理由とする労災の申請件数も認定件数も年々増加していますし、精神疾患を理由として過労自殺する労働者も増加傾向にあります。
3-2.ストレスチェックの義務化
このような現状を受けて、政府も労働者のメンタルヘルス対策の施策を打ち出しています。たとえば、平成27年には労働安全衛生法が改正され、いわゆる「ストレスチェック義務化法令」が施行されました。
これは、企業が定期的に従業員の抱えるストレス状況の検査を実施し、その結果を労働基準監督署に報告すべきとする法律です。
本人に結果を通知して自分のストレス状況について意識付けを行うとともに、実施したストレスチェックの結果を集団的に分析することにより、職場環境の改善につなげようという目的をもっています。
従業員が50人以上の企業は毎年1回以上、全従業員を対象としたストレスチェックを行わねばなりません。
ストレスチェック検査や労基署への報告を怠った企業には、労働安全衛生法違反として罰則も適用されます。
3-3.企業に要求されるメンタルヘルスケアの指針
厚生労働省は各企業に対し、従業員のメンタルヘルスケアに積極的に取り組むように要求しており、そのため「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を発表しています。これによると、企業は自社の従業員に対し、以下のような方法でメンタルヘルスケアを行うべきとされます。 ● セルフケア
セルフケアとは、従業員自身が自分でストレスに気づき、メンタルヘルスを管理することです。企業は従業員が適切にセルフケアを行えるように、必要な知識と方法を身に付けさせる必要があります。 たとえばストレスチェックについての教育や研修を行ったり、社内に相談できる制度を整備したりすることが要求されます。 ● ラインによるケア
ラインによるケアとは、管理職を通じて一般の労働者のメンタルヘルスケアを行うことです。 具体的には、管理職の立場にあるものが部下のストレス状態に配慮して、問題を抱えているものがいたら積極的に援助することなどが予定されています。 これが適切に実施されるためには、企業が管理職に指導教育するのはもちろんのこと、そういった制度を取り入れていることを従業員全員に周知して広めておく必要もあります。 ● 事業場内の保健スタッフによるケア
事業場内の保険スタッフによるケアとは、自社内に保健師や医師、カウンセラーなどをおいたり、専門のスタッフを養成したりして、悩みを抱える従業員の相談を受けられる体制を築くことです。 ● 事業場外の資源によるケア
事業場外の資源によるケアは、外部の保健センターや医療機関などと連携して、従業員のメンタルヘルスケアにあたる方法です。 社内における相談対応だけでは、従業員が情報漏えいなどを心配して利用しにくい場合もあるので、外部機関との連携が重要となります。 ● 復職支援プログラムの策定
メンタルヘルス問題で休業を余儀なくされた従業員がスムーズに復職できるように、支援プログラムを策定しておくことです。以上のように、厚労省は各企業にメンタルヘルス対策を求めていますが、EAPはまさしく上記の指針に沿うものです。 たとえば、EAPで社内に専門のカウンセラーや産業医を入れて従業員の相談に応じることは「事業場内の保健スタッフによるケア」となりますし、事業所外の資源活用としての医療機関やカウンセリング機関の利用などもEAPそのものです。 企業がEAPを導入することは、国の進める従業員のメンタルヘルスケア施策に沿うものと言えるのです。
4.EAP導入の必要性
4.EAP導入の必要性
この章では、なぜ、今企業がEAPを導入すべきと言えるのか、その必要性をさらに踏み込んでご説明します。
4-1.安全配慮義務との関係
企業がEAPを導入する必要性を考えるとき、「安全配慮義務」を抜きにすることはできません。 安全配慮義務とは、企業が従業員を雇い入れるときに、従業員が安全に働ける環境を提供しなければならない義務です。 たとえば、従業員に過重勤務を科して従業員が体調を崩したり過労死したり、精神疾患を患って自殺したりすると、企業は安全配慮義務違反を問われて労働者や遺族から損害賠償責任されるおそれがあります。 自社内でセクハラやパワハラが横行しているのに放置していて従業員がうつ病になったケースなどでも安全義務違反となる可能性があります。 企業が安全に経営を続けていくためには、安全配慮義務への適切な対応が不可欠です。 そしてEAPは、企業が安全配慮義務違反にならないために非常に有効なシステムです。 EAPによって従業員の抱えるストレスを早期に把握して、従業員が気軽に利用できるカウンセリングシステムを構築していたら、通常従業員のメンタルヘルス問題や過労自殺問題などで企業が安全配慮義務違反を問われることは少なくなるといえます。4-2.コンプライアンス
現代の企業に求められる価値は、単に収益を上げて株主に利益還元することにとどまりません。社会貢献など、より高いレベルでのコンプライアンスが求められます。 こうした要請は、上場企業だけではなく中小企業にもあります。 EAPによって優れた福利厚生制度を導入していることは、企業に対する社会の評価を高めます。そうすれば販売している商品やサービスも売れやすくなり、業績を高めることにつながっていくでしょう。4-3.現在の従業員の士気の向上
EAPは、基本的に従業員の福利厚生制度です。そこで、導入すると従業員の会社への忠誠心の高まりや士気の向上を期待することができます。 また、メンタルヘルス疾患にかかって休職する従業員が減るだけでも人材や機会の喪失防止になります。4-4.優れた人材を集めやすくなる
企業がEAPを導入していると、企業に対する社会の信頼も篤くなりますし、社内で働く従業員にとっても居心地がよくなりますから、就職希望者も増えることが期待できます。 新卒採用でも優秀な学生が集まりやすくなりますし、中途採用でもヘッドハンティングなどで希望する人に来てもらいやすくなるでしょう。 今は少子高齢化の影響により、特に中小企業の場合には人材集めが厳しくなっていますから、EAPによって優れた人材を集めやすくなることは、企業にとって大きなメリットとなります。以上のように、現代の日本社会で活動する起業がEAPを導入する必要性は高いと言えます。
5.具体的なEAPの導入方法
5.具体的なEAPの導入方法
EAPは、もともとは従業員のメンタルヘルスケアのためのプログラムであるため、医療機関やカウンセラーによるサービスを意味すると思われていることが多いのですが、実際にはもっと広い範囲のサービスが射程範囲に入ります。
具体的には、以下のようなものがあります。
- ○ 傷病以外の理由で短期間の休職制度を作る
- ○ ジムやフィットネスクラブの利用料金の助成
- ○ 社内交流クラブの設置運営
- ○ 弁護士による法律相談
EAPの導入方法にはさまざまなパターンがあるので、各企業の状況に応じた対応を選択できるものです。
EAPのメリットや必要性は理解できたけれど、具体的な導入方法がわからない場合や、国の定めるメンタルヘルスケアの指針に適切に対応する方法を知りたい場合、弁護士がアドバイスをいたします。
また当事務所は、弁護士の法律相談にもとづくEAPプログラムも推進しております。
関心のある企業様は、当事務所までご相談ください。